統計学・疫学・情報科学

若年性癌についての総説 健康

若年性癌についての総説

一昨年、私の研究室から若年性腸癌についての総説をネイチャー・レビュー(臨床癌科学)誌に発表しましたが(こちらの記事)、今月同じネイチャー・レビュー(臨床癌科学)誌に、今度は若年性癌全般の増加傾向についての総説を発表することができました。この総説については、所属するブリガムアンドウィメンズ病院からプレ…
科学と政治の健全な関係とは 科学のための科学

科学と政治の健全な関係とは

先日からニュースを見ていて、気になったことがあるので書いてみたいと思います。それは、新型コロナウイルスの流行抑制のための科学的エビデンスと政治の関係です。 今回のパンデミックでは、科学的エビデンスに基づく政治判断の重要性が一般の人たちにもより身近に実感されているように感じます。なぜなら、ウイルスの流…
統計学は科学・経済・社会を統べる!5 分子病理疫学(MPE)

統計学は科学・経済・社会を統べる!5

前回は、メタ解析論文の多くが科学的信頼性の低い論文を区別することなく解析を行っているケースが多いことについて述べました。その結果、多数の論文の解析によってより信頼性が高くなるはずのメタ解析の多くが、科学的信頼性がほとんどないものになってしまっている現状があります。 さて、これはメタ解析に限らない話で…
統計学は科学・経済・社会を統べる!4 分子病理疫学(MPE)

統計学は科学・経済・社会を統べる!4

前回の記事から少し時間が経ってしまいましたが、これまでに、科学的なエビデンスやその根拠となる統計学の重要性が社会で軽視されがちであること(こちらの記事)、一方で科学的根拠の基準として用いられているP値が本来の意味を逸脱した形で濫用されており、その結果多くの科学論文において再現性がなくなったり低くなっ…
統計学は科学・経済・社会を統べる!3 分子病理疫学(MPE)

統計学は科学・経済・社会を統べる!3

前回の記事で、多くの論文の科学的根拠となっているP値が完璧ではないということを書きました。 これは非常に重大な問題であるのにも関わらず、あまり表立って議論されていないように見受けられます。また、前回も書いたように、多くの再現性のない論文が生産される一つの要因にすらなってしまっています。この問題はいわ…
統計学は科学・経済・社会を統べる!2 分子病理疫学(MPE)

統計学は科学・経済・社会を統べる!2

以前の記事で、統計学の重要性と、科学の信頼性に与える影響について書きました。今回は少し専門的になりますが、より具体的な事例について説明したいと思います。 研究者の皆さんなら誰でもご存知だと思いますが、得られたデータを統計処理する際に用いられる、Pという値があります。例えばAとBという2つの集団のある…
若年性大腸癌についての総説 分子病理疫学(MPE)

若年性大腸癌についての総説

前回の記事でも述べた、若年性大腸癌についての総説が私の研究室からつい先日ネイチャー・レビュー(臨床癌科学)誌に発表されました。 https://www.nature.com/articles/s41571-020-00445-1 ちなみにこの雑誌のインパクトファクターは今年50を超えました。私はイン…
長期的な科学の発展のための投資 健康

長期的な科学の発展のための投資

最近大切な研究費申請の締め切りや論文投稿、改訂が重なり、しばらく更新が滞ってしまいました。 私が以前から繰り返し述べているように、現在の科学研究には短絡的な研究成果を追求せざるを得ない悪しき潮流が生まれています。 近年のアメリカでは、生物医学分野の研究予算が伸び悩む中で、博士号取得者が毎年参入して研…
コロナ後の社会変革への希望4(日本について②) 健康

コロナ後の社会変革への希望4(日本について②)

例えばPCR検査についてです。PCR検査の精度に関して言えば、感度も特異度も100%ではありません。ですから、PCR検査の実施と活用法についてはしっかりと戦略を立てて行う必要があると私は思います。 発症からしばらくしたコロナ患者は時間が経つほどPCR検査の感度が低下し、偽陰性が増えます。一般的な検体…