アメリカ癌協会 (ACS) Jiler Professors and Fellows Conference@ツーソンへの参加

少し前の11月の話になりますが、アリゾナ州ツーソンにて、私が今年受賞の栄誉に預かった、American Cancer Society Professor Awardの受賞者および関係者が集まる学会に参加することができました。超一流の様々な研究者の方々と、意見交換をすることができて大変有意義でした。

私が参加しているイギリスのCancer Grand Challengeもそうですが(こちらの記事)、ただ研究資金を提供するだけでなく、若手から重鎮までの幅広い受賞者同士の交流を促進するために、定期的なネットワーキングの機会が設けられているのは素晴らしいと思います。

癌研究といっても、基礎研究から集団研究や学際的統合研究までいろいろあります。幅広い研究分野のトップや若手の方々との他流試合や交流を促進し、革新を起こすような仕組みを整えるのが、欧米社会では当たり前のように行われていて、日本でも参考になるのではないでしょうか。もちろん若手から重鎮まで同じような言葉遣いをして、皆がお互いを尊重して、基本的にフラットな交流をします。

日本では上下関係があらゆる局面にもちこまれ、特に医学系学会では、厳しい上下関係があります。基本的に重鎮しかぞんざいな言葉遣いはできません。若手は重鎮に対して萎縮し、自由に言いたいことも言えないのが一般的だと思います。こういった厳しい上下関係が有意義な交流を阻害しがちなのが、じつに残念であります。例えばAI等の分野では若手の方がより専門家が多かったりしませんか。新しい分野や若手の斬新な知見を取り入れることが科学の発展に繋がっていくものだと私は考えます。

個人的には、科学に携わる人間は公の場ではすべからく丁寧語を使うべきであると、私は考えています。皆がお互いを尊重して、基本的にフラットな意見交換や交流を可能にするための方法は、若手から重鎮まで同じような丁寧な言葉遣いをする以外にないと思います。

また、余談になりますが、日本人はせっかく米国の学会に高額の費用を払って参加しているのに、ネットワーキングをせずに、日本人の同じ研究分野の同僚で集まって集団行動していることが多く実にもったいないと感じます。おそらく、個人として自分の意見をしっかりと英語で伝えて相手と対等に議論できる力を養う機会が少ないか、その能力が足りないことで、尻込みする日本人が多いことが考えられます。他流試合はいうに及ばず、たとえ内輪の会議でも積極的に発言しない人が多いです。失敗するのが悪という教育を長年受けてきていますから致し方ありませんが。前にも書いた通り(こちらの記事)、挑戦し失敗することは成長や成功のために必要なことなのです。

ツーソンには二十数年ぶりの訪問となりました。写真のとおり、アリゾナの典型的な風景である、サボテンの原野が辺り一面に広がるリゾート地で、いい気分転換になりました。また、帰りに訪れたツーソン空港近くのサワロ国立公園と砂漠博物館(Arizona-Sonora Desert Museum)は、サボテンの原野の屋外に砂漠の動物や植物が展示された、今まで訪れたことのないタイプの博物館(というより屋外動物園と植物園)で、一見の価値がありました。

(実は、私の地元の明石市とその近隣の稲美町、加古川市、播磨町、高砂市、神戸市西区の広域にまたがる、似たようなコンセプトの「いなみ野ため池ミュージアム」があります。)

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