逆境を乗り越えて幸運を掴む1
誰にでも想定外の失敗や悪い出来事が続くことがあります。今回は、逆境のとき今まで私がどのように対応してきたかを書きたいと思います。例えば、留学する予定だったはずなのに諸事情により日本に留まらざるを得なくなった、研究費が取れなかった、論文がリジェクトされたなど、研究者生活においても、その他の日常生活でも悪いことが続いて、逆境と思われるときがあるでしょう。
外から見ると順調に成功してきたと思えるような人生でも、実際は他人には知る由もない悪い事の連続だったかもしれません。おそらく誰にでも同じ様にいい事と悪い事があるものだと私は思います。これまでの研究者生活で私にもたくさんの想定外の事、悪い事がありましたし、またある時は自ら失敗をしてきました。
私は不運なことが続いたときには、ただ沈んで前進を止めるのではなく、気持ちを切り替えたうえで現実的に自分ができる対策を講じて行動に移すように心がけています。今までいろんなピンチをどう切り抜けてきたかを考えた時に、我ながら思うのは、逆境のときは自分にできる事をやるしかないということです。自分にコントロールできない事はさっさと受け入れる、諦める、そしてできる事だけにフォーカスするということでもあります。
アメリカ人ではなく日本人に生まれたせいで英語ができないと嘆いても仕方がない。英語がどうすればできるようになるか考えて実行する。研究費の申請書を書くときには最善を尽くしますが、提出後はもうコントロールすることはできません。これは、研究費だけでなく仕事の面接などにも言えることですが、他人が自分をどう評価するかは、自分の実力だけでなく運の要素も多々入ってきます。不合格だったらさっさと諦めて、自分が次にできる事を考え、実行します。ピンチはチャンスになりえます。私が多くの人と接してきて思うことは、悪い出来事に影響を受けすぎて自信を無くしてしまい、行動をやめてしまうのではないか、そして行動をやめると必然的に幸運に出くわす機会も減るのではないかということです。
予定外のことは必ず起こります。その時に、悲嘆に暮れるのではなく、いかに前向きに、柔軟に方針転換できるかが、人生のその後の展開を決めていくと思うのです。また、成功するか否かに関わらず、何事にも最善を尽くし、可能性のある手段は全部試してみるというのが私の信条です。例えば何かのポストに応募するときに、現職を辞めなければならない場合は別として、合格しなかったとしても失うものは何もありません。もちろん応募に際して時間や気力、体力は使うので自分のキャパシティとの相談は必要でしょうが、失敗を恐れて二の足を踏むあまり何もせずにチャンスを逃してしまうよりは、とりあえずやってみることが大切です。仮に失敗したとしても、悪いことの後には良いことがある、これは自分の進む道ではないんだと明るく受け入れ、消化することです。実際に私の人生を振り返ってみた時に、想定外だとか、失敗したなとか思って別の方向に進んだことがかえって良かったと思えることが案外多いです。
私の人生は転機の連続でボタンを一つ間違えると全然違う展開になっていただろうなとつくづく思います。転機の多くは逆境のときでした。逆境ではとにかく自分のできることをして粘ろうと思いました。いわば薄氷の上を歩いてきたようだったと我ながらヒヤヒヤします。また、私は自分は運がいい方だと思っていますが、運が良いと自分で信じられることが運を呼び込むし、そういう普段の前向きな物事への取り組み方や姿勢によって運をつかむことが出来るのかもしれないと思います。また、繰り返しになりますが重要なのは、悪いことが起きた時の気持ちの持ち方、切り替え方です。
私はこれまでに数多く失敗してきたし、これからもするでしょう。高い目標に挑戦する以上は失敗なしに成功だけということはありません。私の好きな将棋のレジェンド、羽生永世7冠でも3割以上負けていますし、谷川永世名人は4割も負けています。要は失敗に対して打たれ強い人が最後に勝つということです。生きて挑戦し続けることができれば、そのうちいつか必ず勝つということです。失敗のない、あるいは少ない人生というのは、大きな挑戦をしていないということだと思います。本当は失敗のないことが失敗なのです。要は失敗からどう学ぶかです。だからアメリカの管理職の面接では必ずと言っていいほど失敗から何を学んだか、どう解決してきたかを聞かれるのです。マネージャーが直面するような大きな問題に立ち向かうには、挫折からどう立ち直ったか、失敗をどう乗り越えたか、そこから何を学んだかが大切と考えられているからです。
次回では自分の経験から具体例を挙げて説明します。
次回に続く