国際生化学・分子生物学連合の分科委員会
私は、タンパク質の名称が乱立している問題に以前から問題意識を持ってきました(こちらの記事に私の考えについて詳しく書いたのでぜひ見てください)。これについて、米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオピニオンペーパーを発表したことが縁となり(こちらの記事)、国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)の非酵素タンパク質の名称に関する分科委員会の委員になりました。
先日、委員になってから初めてのオンライン会合が開催され、他の委員の皆さんの前で私の考えを発表することができました。この国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)という組織の名前の通り、委員会には主に生化学や分子生物学を専門にしている方々が多く、いつもはあまり接点がない専門の人と話ができるので楽しみにしていました。タンパク質の名称問題は、タンパク質そのものを研究対象としている生化学、分子生物学分野にとどまらない大きな問題です。当然ながら、どの専門の方々も、タンパク質の標準化された命名法がないことには問題意識を感じておられました。しかし、そんな委員の中ですら今から命名の標準化のためのロードマップをどう作成していくかということは、意見を合わせることが難しく、この問題の根深さを感じました。
私は、以前述べたように、基本的にはタンパク質の元である遺伝子の名称を活用することにより標準化すべきだと考えていますが、タンパク質の研究者から、遺伝子の名前から直にタンパク質の特徴が思い浮かばないことがあり、その場合は適切な名前だと思えないという意見がありました。タンパク質の専門家は名前には私達より強い思い入れがあるでしょうし、そういった意見は傾聴しなければなりません。ただし、そうだとして、他に統一名称をつけるための良い対案があるわけでもないので、結局は遺伝子の名称を何らかの形で活用する方法を用いることになるでしょう。
ただ、委員はみな命名法を標準化したいという考えを持っていることは間違いなく、これからも議論を続けてタンパク質の名称の標準化に貢献できるような働きをしたいと思っています。