新型コロナウイルスのワクチン接種
マサチューセッツ州では、一般のワクチン接種が4月19日に始まり、既にかなりの希望者がワクチン接種を受けられているようです。最近は感染者や死亡者が目に見えて減っています。明らかにワクチンの効果が出始めたと考えて良いでしょう。
一方で、このワクチンの正式な許認可はまだ出ていません。去年開発を始め、史上初めて実用化されたmRNAワクチンが後年人体にどのような影響をもたらすかは未知数です。
私自身は医療従事者であり、重症化リスクもないわけではないので、過去記事でも述べたとおり2月に2度目の接種を済ませました。ワクチンの接種に関しては、周りの空気に流されたり、強制されることなく、自分自身がリスクとベネフィットを天秤にかけて打つか打たないかを決定するべきだというのが私の意見です。
日本のニュースをたまに見る中で、一つ気になったことがあったので書いておきます。日本でもワクチン接種が開始されていて、よく大規模接種のための打ち手が足りないという話を耳にします。医師や看護師でない人が注射できないためでしょうか。特例として、歯科医等にも接種をしてもらう案があるとか。
私はこのニュースを聞いて驚きました。というのも、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アメリカでは、普段から医師が予防接種をすることはまずないと思います。そもそも注射は医師の仕事ではないからです。医療の仕事はもっと分業化されています。これについてはいい点と悪い点がもちろんあり、分業が全てよいとは一概に言えないのですが。病院には看護師ではない採血を専門に行う人もいますし、看護師ですら日本に比べると注射をすることは少ないのではないかと思います。
毎年打つインフルエンザワクチンなどは、病院でなくてもその辺の薬局で打ってもらうこともできます。そういう薬局には医師は常駐していませんし、打っている人はおそらく薬剤師だと思います。私の家族などは最初は薬局でインフルエンザワクチン接種をすることに抵抗があったらしいのですが、問診など意外とちゃんとしていたと言っていました。今は新型コロナウイルスのワクチンも打ってもらうことができます。私自身は病院で打ったので、薬局がアナフィラキシーショックにどう対応しているのか見ていないのですが、いざというときに医師が対応できるような対策はなされていると思われます。
つまり、昨今の日本の医療の逼迫は、おそらくこのような分業化が進んでいないことが一つの原因ではないかとも思います。ただアメリカと違って、日本では医療費が安いことが当たり前になってしまっているので、アメリカのようなたくさんの専門家と職員を支える仕組みをつくるのは難しそうです。筋肉注射は怖そうですが、それなりの教育と訓練をすれば、専門性をそれほど必要とせずできるものではないでしょうか。その場に医師が常駐して対応できるのであれば、注射自体を医師が行う必然性はないのではないかと考えます。医師は、その知見を生かしてアナフィラキシーショックへの対応等のもっと専門性が求められる仕事をするべきです。要するに人材資源の有効活用です。法制度の関係で難しいのかもしれませんが、もっと合理的に考えるべきだと思います。日本ではどうしてもゼロリスクが求められがちなので、医師の仕事が増えているような気がします。ワクチン接種のための医師が足りない!と何で騒いでいるのだろうとふと考えてしまいました。