首都直下地震
最近、リモートワークが続いて朝晩の自転車通勤がなくなったため、運動不足解消のために室内バイクマシンを毎日漕いでいるのですが、その際によく過去のNHKの番組を見ています。その中に昨年12月頃に放送された首都直下地震のシリーズがありました。
昨年の12月といえば、水面下ではおそらく感染が広がりつつあったものの、世間にはコロナのコの字もなかった時期です。それからたったの1年以内での世界が激変ぶりには驚くばかりです。
番組を見て、震度7クラスの首都直下地震が起きた場合、東京を中心として甚大な被害が出ることがまざまざと理解できました。特に住宅密集地での火災の連鎖、都心部での人の密集による群衆雪崩、電気水道ガス供給停止、水不足、食糧不足、避難所不足、病院機能の麻痺、消防救助隊員の圧倒的な不足、河川の堤防決壊による地下鉄網の浸水などの、人口と建物が密集しているために起こる地震と直接関係ないところでの様々な被害の連鎖について、とてもリアリティのある説明がなされていたことが印象的でした。
一方で、番組ではまったく取り上げられていませんでしたが、何十万台とある自動車とトラックの立ち往生とそのガソリンに火災が引火することによる大火災・大爆発の危険を私は心配します。
東京の限られた居住スペースの関係から、個人が災害対策として水などを備蓄するには限界がありますし、人口密集をすぐに解決する術などありません。正直言って、東京とその周辺に住まない勤めないということが一番の対策のような気がします。
政府が想定した首都直下型地震による死者数は2万3千といってましたが、どこからこういう楽観的な数字が出てきたのか。火災による被災家屋が40万と推定しておいて、矛盾に満ちています。
過去100年以内に起こった関東大震災、東京大空襲の被害(それぞれ死者約10万人強といわれています)を大きく上回ることを想定するべきでは。当時よりさらに東京一極集中が進んでいますし、高齢者が激増しています。科学的に推定すれば地震関連で10万から100万の死者数とする方が現実的な想定ではないでしょうか。
過去に起こった地震の頻度などからの予測ですが、今後30年以内に首都直下地震が起きる確率は70%だそうです。我々が生きている間に起こると考えて備えたほうが良さそうです。また、地震だけでなく、富士山の噴火も考慮に入れるべきでしょう。これらがもし近い間隔で起きたとすれば、被害は更に莫大なものになります。とにかく、近い将来に東京に何も起こらないという保証はありません。
また、もし仮に豪雨災害、酷暑、新型コロナウイルスの多重苦の現在、地震が起こったらどうなるのでしょうか。弱り目に祟り目どころではありません。政治と経済の中枢が東京に集中していることがどれだけのリスクか、国の機能が停止する危険性についてよく考えるべきです。
私は以前から、災害リスクの回避等のために、首都機能を分散すべきであると考えてきました(この記事)。実際に世界に目を向けると、政治と経済の中心が違う国は案外多くあります。例えば、米国、カナダ、オーストラリア、ブラジル、インド、パキスタン、カザフスタン、ベトナム、ミャンマー、南アフリカ、トルコ、スイス、イスラエルなど。さらにいえば中国も北京と上海に分かれています。
しかしながら、日本では遅々として対策が進みません。東京に人口が密集している主な原因は、勤務先が東京に集中しているからです。中には、先見の明があり本社機能を分散させている企業もあるようですが、地方はあくまで出先という位置づけの企業がまだ多数派です。東京の危険性は認識しつつも、生きていくために首都圏に住むしかない人も多いと思います。
やはり政府が率先して分散を行わないと、他の企業も追随することはなさそうです。現時点では、具体的には遷都が一番効果のある政策でしょう。個人的には奈良、広島、福島、琵琶湖近辺がいいのではないかと思います。
日本の(だけでなく全世界に共通する?)悪い点として、実際に被害が出ないと対策が進まず、予防が評価されないという点があります。私の専門のがんでも全く同じです(この記事を読んでください)。何でも先回りして行動することが成功の秘訣です。
新型コロナウイルスのパンデミックは、リモートワークの普及などで働き方を根本から変えるきっかけになり、東京一極集中を解消するきっかけになるのではないかと期待しています。しかし今後10年以上かけて起こるような変化を待つような暇はありません。これを読んで危機を感じた人は、どうにかして東京から脱出する方法を考えてみられてもいいかもしれません。