コロナ後の社会変革への希望5(日本について③)

ここまで日本の新型コロナウイルス対策について私の意見を述べましたが、なぜ日本では合理的でスピードのある対策が取られにくいのかということについて、私の考えていることを述べたいと思います。

少し突飛に聞こえるかもしれませんが、私は根本的な原因は日本社会の根底にある、中世以来の儒教的・封建的な価値観とそれを基に江戸時代に確立された幕藩体制の影響が未だに続いていることにあると考えています。これは今回の新型コロナウイルス対策に限ったことではなく、バブル後の経済停滞などの原因ともなっている社会全体が抱える問題です。

日本では上司に対して自分が正しいと思うことを主張しにくい空気があります。上司が人事権などの決定権を握って部下の人生を左右するからです。なぜそうなるかというと、皆が一つの組織で一生を終えることが普通だからです。同じ場所で一度固まった評価を覆すことは難しいため、失点を恐れて冒険ができなくなります。いわゆる村社会では、ごますり、同調などの本来の実力と関係のないところが評価されやすい傾向が生まれます。そしてそれらの硬直化した組織では、科学的な正しさ、効率や組織としての成果より、人間の上下関係やリーダーの建前・メンツなどの他の要因が優先されてしまうのです。

その結果、正しいことが合理的に進められにくい組織が出来上がってしまいます。それが日本の政府、大学、会社といったあらゆる組織の根本原理としていまだに生き続けています。

新型コロナウイルス対策についても、政府の中で現場経験のある専門家の意見が重視され、皆で透明性のある議論をして物事を進められる環境であったらと思います。また、政府の中にも多様な経験を持った人材が必要です。同じ組織でずっと働くことが良しとされるのでは、多様な経験も積めませんし、その組織の妙な論理に染まって合理的な判断のできない人間が出来上がってしまいます。

近年は転職も当たり前となり、徐々に社会は変わってきてはいますが、根本的な価値観は私が日本を飛び出した25年前(1995年6月25日でした)と変わっていないように思いますが、いかがでしょうか。私が医学部卒業後間もなく日本を出る決意をしたのは、自分の性格では村社会でやっていくことは難しいし、生きづらいと判断したからです(日本からアメリカへに詳しく書いてあります。最近続きを書いていませんが、近日更新します。)。

もちろん、村社会にも良い面もあって、皆が監視しているので悪いことができない、皆で協力して平均以上の良質なものを作れる、安定感がある、成果にあまり結びつかない地道な努力なども評価され得るなどでしょうか。

私はアメリカの闇も日本の良さもわかっているつもりです。ただ、私個人はそれでも仕事をするなら日本よりアメリカのほうが自分の力を発揮しやすかったというのは間違いないです。生活するなら日本のほうが良ところもあるので複雑な気持ちですが・・・

今からの時代は人間にしかできない独創性がますます求められるようになりますから、日本も江戸時代からの旧態依然とした硬直した組織性と思想を見直して行かなければなりません。アメリカのように実力主義すぎて、社会の安定性が失われるほどではなく、日本人の真面目で働き者という良さを生かして、もっと個人が希望を持って実力を発揮できる社会を作っていくというのはいかがでしょうか。

今の日本では、皆が我慢を強いられるため、本来ならやる気と能力に溢れた人材が年を経るにつれて埋もれていってしまっています。また、そのために人の成功を素直に褒めることができず、足を引っ張り出る杭を打つような非生産的な傾向が強まってしまいます。

私の年くらいになると、先が見えてしまいやる気を失っているが、本来なら能力のある人材がまだたくさんいるはずです。若い人たちの無限に近い可能性はいうに及ばず。それらを生かさないのは非常にもったいし、残念に思います。多くの有能な人材が、周りの空気に飲まれて安定志向に走ってしまっているのが気がかりです。

近年の中高生の将来の夢、なりたい人物像の上位に公務員が入ってくるというではありませんか。そもそも公務員て、アクションそのものではないですね。事務仕事がアクションプランとしての将来の夢ということでしょうか(念の為、公務員は重要な仕事ですのでその夢自体を否定するものではありません)。

我々が子供の頃は、もっとアクションそのもの(例えば野球する、飛行機を操縦する、研究する、歌手として歌う、おいしいケーキを作る、保母さんになって子供の世話をするとか)が大半の子供の夢だったのに。もちろん公務員として人のために尽くしたいという立派な子もいるかもしれませんが、人のために尽くすこと自体は公務員にならなくても当然できます。

要は、安全で、安定した職であればよいという風潮なのでしょう。でも優秀な人の多くが安定志向で全員めでたく公務員になってしまうとしたら、誰が起業して、新しい価値を生み出し、事業を成功させて税金を納めるのですか。あるいは誰が日本の科学界を引っ張っていくのですか。すでに有能な人でも不安定な研究人生を避けるように人生設計をせざるを得ないと聞きます。もっと夢のある社会、果敢な挑戦を暖かくサポートするような社会にできないでしょうか。

今回の新型コロナウイルス流行を機に、リモートワークなどやペーパーレス化など、本来なら遅々として進まなかった社会の合理化がますます加速するのは間違いないでしょう。その他の面でも、古くなってしまったやり方を見直して、社会を変えていってほしいと切に願います。

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