コロナ後の社会変革への希望2(デモについて)
日本のことについて書こうと思っていたら、ミネソタ州での人種差別に対する抗議デモと暴動が全米各地に波及してしまったので、アメリカ社会について追加で思うことを書いておきたいと思います。
全米でも比較的治安のよいとされるボストンでも、平和的なデモだけでなく暴動も起きています。ダウンタウンの目抜き通りの店でショーウインドウが破壊され、略奪行為も起こりました。昨日は郊外の街でもデモが行われ、多くの人が集まっていました。まだしばらくはデモが続きそうです。
まず、放火・略奪・破壊はデモに便乗した明らかに反社会的な行為であります。また、デモについても、人種差別への抗議のほかに、個人的には失業や自粛に対するストレスが要因の一部となっていると考えています。
現在、全米では約15%もの人が失業しています。日本と違ってアメリカでは必要となくなった人員はすぐレイオフするので(これは不景気のときに限りません)、このような未曾有の大惨事のなか、特に貧しい人たちを中心として職を失っている人が多数います。現実として、そうした人たちには黒人やヒスパニックなどの有色人種の人たちも多いのは事実でしょう。また、彼らはいわゆるエッセンシャルワーカーとして、コロナ禍でも人と接し続けるようなリスクの高い仕事をしている割合も高いと思われます。
私はボストンであからさまに嫌な思いをしたことはないですが、人種差別もないとはいえません。何世代もの間、厳しい経済状況に置かれた特定の人種のグループの中では、犯罪者になる確率が高くなり、社会の他のグループの人たちから疎まれたり、異なった目で見られてしまいやすいということもあります。
前の記事で述べたように、こうした社会構造の歪みによる経済格差や健康格差が新型コロナウイルスに対する被害の地域差・人種差をもたらしている大きな要因と考えられており、今まで抱えてきた不満と相まって、ここに来て大きなフラストレーションが爆発してしまっています。ちなみに、テレビの画像などから見る限り、デモに参加しているのは黒人だけでなく、白人の特に若者も多いのが印象的です。私の考えでは、彼らの参加の動機の中に自分の置かれた状況(例えば長引く経済活動の停止の中での失業や高額な学費ローンの負担など)に対する不満もあるのではないかと思います。
私はもちろん人種差別には大反対です。しかし、新型コロナウイルスの感染が収まらないなか、被害者のご家族が懸念を表明されているにも関わらず、ミネソタの事件に関してここまでの大騒ぎになってしまうアメリカがとても心配です。ストレスのない平時ならこうはならなかったことは明白でしょう。
冷静に考えてみれば、集会をすることでコロナに感染してしまう確率が上がるのです。感染の再拡大はデモに参加している人たちやその他の人たちの命を危険にさらし、経済を更に悪化させ、不満が増大するという負のスパイラルを起こしてしまいます。オンライン上などでの署名活動をするなど、別の方法で声を上げることはできないのでしょうか。
実際に、ここ数日コロナ患者が増加したというデータが出ているようです。2週間後の患者数が心配になってきました。デモのせいで都市閉鎖が再び厳しくなるかもしれません。やはり、以前述べたように、時間はかかりますが、教育機会の均等化など、広がる格差に対する対策により、なんとかこの不均衡な社会を変えて行ってほしいと願います。