コロナ騒動のボストン2
ついにアメリカが新型コロナウイルスの感染の中心地となってしまいました。ボストンのあるマサチューセッツ州でも感染者が日々右肩上がりに増加しています。
4月1日時点での州内の累計で、122人死亡(前日の89人から33人の増加)、陽性は7,738人(前日の6,620人から1118人の増加)、検査件数は51,738件(前日は46,935件)とのことです。
この数字からも、感染拡大が続いている事は明らかです。死者や陽性患者数の増加率が日毎に大きくなっていき、危機を感じます。アメリカでは、医療費が高額なため単なる風邪では病院に行かない人がほとんどですので、実際の感染者はもっと多いでしょう。私の所属するブリガム・アンド・ウイメンズ病院から先日送られてきたメールによると、マサチューセッツ州内のかなりの人口がすでに新型コロナウイルスに感染している恐れがあるとのことです。
我々にできることは用がなければ人のいるところに行かないということです。実際に近くにいる人の人数に比例してリスクが上がります。単純に考えて仮に平均して人口の100人に1人が感染しているとすると、1人とすれ違ったときその人が感染している確率は1%ですが、もし100人いる集団の中に入ると(100人が全くお互いに関係がないとして)、その集団内に1人でも感染者のいる確率は約63%です(計算の仕方は考えてください。暇つぶしにはもってこいですよ)。満員電車に乗ることがいかに危険かが想像つきます。
さて、私は3月上旬に日本から帰国して病院より2週間の自宅待機を命じられ、ようやく職務に復帰できたと思ったのも束の間、その後の1週間の勤務中に状況が更に悪化し、再度6週間の原則自宅待機となってしまいました。
診療業務や実験動物の世話等の避けられない理由を申請して承認されなければ在宅勤務です。私の所属病院でも新型コロナの患者を受け入れているので、病院に行くと少なからず感染の危険も生じます。私は病理科医師なので臨床などで直接貢献できることはないのですが、私のところにも検査試薬や余剰人員について問い合わせがあったりと、病院もリソースの不足に悩まされているようです。人工呼吸器等も不足ぎみで、とても心配です。
私が帰国したときにはアメリカでは日本を含めた東アジアが感染の中心のように思われていたのに、わずか3−4週間でアメリカが世界最大級の感染の中心地になってしまったのです。とても恐ろしいことです。
米国帰国直後の3月上旬に学会に参加したときに、日本からの入国制限はなく、その時点で世界の感染の中心となりつつあったイタリアからも参加者が見受けられ、自分を含めて入国の規制がこんなに緩くてよいのかなと疑問を感じていました。
2月以降に検査を増やした結果として感染者数等が増加した可能性もあるので(実際に今季のアメリカのインフルエンザの大流行の一部はコロナウイルスだったという説もあります)一概には言えませんが、感染爆発は一旦起こると止められないのがよくわかります。
マサチューセッツ州も3月中旬に緊急事態宣言を出して外出制限をかけており、学校は再度の延長を経て現在は5月頭まで休校、10人以上の集会の禁止、原則在宅勤務の推奨、スーパーや薬局などの生活に必要な小売業を除いた業種の全店舗が営業を休止しています。スーパーでも入店人数の制限、エコバッグの使用禁止、レジの店員との距離を保つなど、かなり制限された中での買い物を強いられます。そして、相変わらず普段よりもかなり品薄の状況です。基本的に皆、家での籠城戦を強いられています。もちろん、スポーツジム等の施設も休業しているので、外出しても屋内はスーパーと病院以外は行くところがない状況です。そのせいか、公園などはいつもより混み合っており、気分転換に運動する人が大勢います。外は大丈夫かと思いますが、少し気になる混み合い方です。スーパーでも、マスクや手袋をしている人をかなり見かけるようになりました。アメリカでは、マスクを着用するイコール重病人と見られるようなところがあったので、これはかなり驚きです。
かくいう私も最近の感染者の増加をみて危機感が強まってきました。感染確率を下げるため、スーパーに行く際はマスクと手袋を着用し、できる限り買いだめしています。趣味の運動も室内バイクマシンにするか、外でサイクリングするにしても人の少ない時間帯に人の少ない道に出かけるようにしています。幸い私の場合ほとんどの仕事は家からでもこなすことができるので、仕事の進捗にあまり影響がないのが救いです。私のラボでも実験などは止まりましたが、セミナーや会議などもオンラインで行われており、オンラインのほうがセミナーや会議の参加率が上がる(多分、他のことをやりながらでも気軽に参加できるからか?)といった思わぬ効果もあるようです。ただ、複雑な案件などは直接話してやりとりする必要性もありますし、そもそも新たな人員を雇ったりするのも外国からの入国制限で今後半年以上滞ってしまうでしょう。
また、日々伝えられている通り、長引けば長引くほど、経済活動の減少による影響が深刻になります。実際、アメリカでは余剰人員はすぐにレイオフされるので、仕事がなくなってしまう人も多いようです。この新型コロナの騒動は100年から数100年に一度の未曾有の危機なのかもしれません。
さて、こんな状況ですから、日本のニュースを見るたびに日本の呑気さが大丈夫か心配になってきます。未だに大勢集まっての会議(例えば国会、人と人との距離が近い)、大人数乗る満員電車での通勤、街もまあまあの人出があるようです。
正直信じられません。なぜ日本では今まで感染爆発が起きなかったのか謎ですが、気を緩めるとすぐにアメリカのようになってしまいますよ。スピードが最も重要なのは明らかであるのに、こういうときに政府の動きが遅く、また強制力のない要請という形を取るのがとても日本的です。個人の良心に任せているだけでよいのでしょうか?もっと自覚を持ってみんなで協力しないと大変なことになります。
東日本大震災の時も地震直後に津波が来ることは予測できていました。行政を始め、皆が危機感を持って対処できていれば助かる人ももっといたはずです。今回も、来るべき感染大流行が予測できているわけですから、入国規制の遅れなどの過去のことはさておき、もっと根本的な対策を今のうちに取れないものでしょうか?
また、このブログでも何度も述べているように、危機になってから対応するのではなく、普段からの予防や対策が重要です。ご存知の通り、新型コロナウイルスには有効な治療方法はなく、要は個人の体力、免疫力が生死を分けています。
実は私も子供のときは家族で8時だヨ全員集合を見て笑っていました。その時、そしてそれ以来ずいぶん笑わせられ幸せな気分にさせていただいた志村けんさんももういません。すごく悲しいです。心からご冥福をお祈りいたします。
私のMPE研究でも明らかになっている、栄養バランスの取れた食生活、規則正しい生活、運動習慣、禁煙などをしている人のほうが、こうした危機でも健康でいられる確率が高いのは明らかでしょう。やはり、健全なライフスタイルの習慣はこういうときにも重要になってきます。また、声を大にして言いたいのは、禁煙は様々な疾病の予防の観点、あるいは現在は人工呼吸器や医療スタッフの仕事時間などを含め医療資源の節約という観点からも、人類への多大な貢献であるということです。喫煙者の方は人類のために今こそ禁煙をしてください。