日本からの訪問客2(食育は重要!)

東京慈恵会医科大学の浦島教授と学生の皆さんが我々の研究室をご訪問くださいました。

浦島教授は小児科がご専門で、ダナ・ファーバー癌研究所でのリサーチフェローシップ、そしてハーバード大学公衆衛生学大学院の修士課程に留学されたご経験があります。長年ビタミンDや小児の腸内細菌などに関する臨床研究に携わられています。

私も同大学院を卒業しており、ビタミンDに関して、栄養学MPE及び免疫学MPEの研究成果を発表しています。まだこのブログで紹介していないので簡単に解説すると、我々の研究室の研究によりビタミンDの血中濃度を高くするような食事と生活習慣は免疫反応のより低いタイプの大腸癌の予後をより改善するという傾向が明らかになりました。また、微生物学MPEの研究については以前の記事で解説した通りです。

このような研究内容の共通性もあり、浦島教授より今回ボストンをご訪問されるとのご連絡をいただいて、皆さんとお会いしました。

写真は夜のディナーの時のもので、今回はボストン郊外のフレンチにしました。慈恵医大出身である私のラボの春木博士研究員も同席しています。

ディナーで浦島教授と食生活について意見交換する中で大変興味深いお話を伺うことができましたので紹介します。

以前から繰り返し述べている語学の問題と同様に、味覚の発達に関しても幼少期の食生活が大きく影響すると私は考えてきました。アメリカでのレストラン探しにいつも苦労するというのは前述の通りです。

この問題には、幼少時から親がいわゆるジャンクフードを子供に与え続けるため、旨味などが区別できなくなっていることが影響していると私は考えています。アメリカの親世代もよい食育を受けていないので当然の結果です。

また、アメリカでは日本と比べて加工食品などに糖分を過剰に添加する傾向があります。アメリカのスーパーで売られているケーキは大概、日本人にとってはうまくなく甘すぎます。

その結果として、アメリカ人は全般的に肥満につながるような不健康な食生活を送っている人が多いといえます。ボストンやニューヨークなどの限られた大都市では、健康に気を使う人の割合もそれなりに高く、比較的スリムな人が多いのですが、アメリカの大部分の地域では、肥満が深刻な問題となっています。

この状況を改善するためには、日本の英語教育の問題と同様に、社会を根本から変えるようなとてつもない努力が必要でしょう。

しかし、私は機会があれば食生活の改善にも携わりたいと思っています。肥満は癌や糖尿病などの様々な病気の可能性を高める万病の元だからです。大規模コホートを使ったMPE研究はそのために必要な知見を明らかにするのに大いに役立つでしょう。

浦島教授から教えていただいたのは、母親の母乳の中には、母親の摂取した食物のペプチド(タンパク質がある程度分解されたもの)が含まれているとういことです。

つまり、私が考えていたより更に早い乳児の段階ですでに母親の食生活が子供に影響を与えるという可能性が高いようなのです。

また、浦島教授は、子供の腸内フローラの形成にご関心を持たれています。現状では産まれたときには子供の腸内はほぼ無菌状態というのが定説ですが、それが本当なのか、そして母乳やその後の食生活が幼児期の腸内フローラ形成にどのような影響を与えるかということを研究されているとのことです。大変興味深い研究だと思います。

大人になってからの腸内フローラの重要性については先の記事で述べました。幼少時のほぼ無菌状態から、如何に腸内フローラが変化するかが明らかになれば、成人の腸内フローラを健康に変化させるヒントにもなり得ます。

これらのことから、やはり食生活の見直し、特に乳児期からの食育は健康に大変な影響を持つのだということを改めて実感しました。

ディナーでは若い学生の皆さんに、日本の既存の安定した道ではなく、人と違う自分の領域を切り開くことの面白さなどについても話させていただき、とても楽しい夜となりました。

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