英語教育6(ボストン在住の日本人とのディスカッション)
私はアメリカに来て以来、日本人が持つ英語力のハンディが世界での日本人の活躍を阻む大変深刻な問題であると日々感じています。
近年は少しはましになっているかもしれませんが、日本ではただ英語ができるというだけでアドバンテージになるほどみな英語が話せません。日本以外の国のエリート層に限っていうと、母国語に加えて英語はできて当たり前なのです。
それどころか、母国語以外に2-3ヶ国語できる人もザラにいます。良い例が私の家の隣人の奥さんです。彼女はベトナム出身で母方が中華系、父方が白人系であるため英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、広東語、北京語ができるそうです。
1つの外国語を学べば他の言語もより簡単にできるようになると私は考えています。スペイン語とポルトガル語のように言語の系統が近いものは学習が容易であるという理由もあるでしょうが、私がそれより重要と考えるのは音のバリエーションです。多言語の多彩な音のバリエーションに耳が慣れることで、他の言語を聞き分けることが容易になるのです。
私は特に幼少期に多言語環境において音に慣れることが重要であると考えています。日本の英語教育は冷めきった鉄を叩いているだけで、あまり意味のないものであると私は考えています。事実、日本人の大半が中学高校と6年間英語を一生懸命勉強しているのに英語を話せません(詳しくは過去記事も参照してください)。
前置きが長くなりましたが、先日、日本人の英語力やグローバル化に対して問題意識をお持ちの竹渓友佳子さん(MEEI/ハーバードメディカルスクール)、高田和豊さん(MIT Media Lab)、平田旭さん(Z-kai USA)とケンブリッジのMIT近くで意見交換させていただきました。お声がけ頂いた竹渓さん、どうもありがとうございました。
意見交換する中で皆様から色々なことを教えていただいたのですが、生後7ヶ月までにある言語が聞ける環境に置かれないとその言語を正確に話すことができなくなる傾向があるようです。
しかしそれよりも後の子供時代、例えば小学生くらいに、外国に来てその国の言語をほぼ正確に話すことができるようになる人もいるようです。実際に私もそういう人に会ったことがあります。
したがって、生後すぐとは言わないまでも、幼少期のなるべく早い時期に外国語の音に触れることは、外国語の上達に大きく影響すると考えられます。
また、人工知能(AI)は近年高い期待を集めていますが、どの分野でもAIの実用化には高いハードルがあるということです。AIが言語を完全に翻訳できるようになれば外国語の取得は必要なくなるという人もいますが、現実的には言語の翻訳はそう簡単ではないようです。
実際に人の会話を文字にすると、読むだけでは理解不可能である場合が多いそうです。人間同士の会話というのは思った以上に複雑なコンテクストを理解することで成り立っていることがわかります。
文章にして理解不可能な会話をAIが外国語に翻訳できるでしょうか?答えはNOでしょう。
しっかりした文章ですら、AIで翻訳すると意味不明の訳になる経験をされた人も多いと思います。また、その言語独特の文化的背景や言い回しがあるために、そもそも他の言語に翻訳が不可能である場合も少なからずあります。
今後AIが飛躍的な進歩を遂げない限りこのような問題を解決することは難しいでしょう。もちろん、そのような進歩が訪れないと言っているわけではありませんが、少なくとも近い将来に実用化されることはないように思います。
したがって、今後しばらくはAIなどの力に頼らずにきちんと英語を取得しなければいけないことは確かです。これからの少子高齢化の時代、日本は外国との交流なしでは現状維持すら難しいでしょう。
しかし英語特区構想を掲げても、政治家のリーダーシップや多くの人々の同意がなければ実現は困難です。そこで次回は皆さんとの議論のなかで私が思いついた解決策を書きたいと思います。
次回に続く