米国癌学会(AACR)@アトランタでの講演1
昨日の米国癌学会(AACR)にて、教育的 セッション「腫瘍免疫学と分子疫学の統合」を無事終えました。大きな会場での午前中の開催だったため、どれだけの人に来ていただけるか少し不安でしたが、会場はほぼ満杯で立ち見が出るような盛況でした。席の数は約440だったので、途中若干の人数の出入りも考えると恐らく350名くらいは集まったのではないでしょうか。ほとんどの方に最初から最後までいていただけたと思います。
私のブログを見て来ていただけた方もいらっしゃったのではないかと思います。お話しする機会はありませんでしたが、どうもありがとうございました。AACRには火曜日までいますので、会場のどこかで見かけたらお気軽にお声がけください。
プログラムブックで講演者の名前をざっと見ると、私を入れても日本人の名前はかなり少ない印象で、数年前に比べると日本人の存在感がずいぶん薄くなった感じがします。
さて、今回このセッションを行うこととなった経緯について書きたいと思います。
私は常々、AACRのような大きな学会で、 癌免疫学と分子疫学のワーキンググループが別々にに活動しているのは癌科学の発展の可能性を狭めていると考えていました。
近年発癌と免疫システムの関係性に大きな注目が集まり癌免疫学が発展していますが、個体レベルを凌駕して人の大きな集団レベルでリスクファクター等と免疫システムの関連性や相互作用を検証するためには分子疫学との分野の垣根を超えた協力が不可欠です。
この分野の発展により得られる成果の例を分かりやすくいうと、「〇〇という遺伝子を持つ人がタバコを一日◇本以上吸うと、△△という免疫細胞の働きの効率をあげて、肺癌の中でも免疫状態によって分けられたある癌サブタイプの確率がX %上がる」といった、誰もが知りたいような詳細な発癌のメカニズムが明らかになる可能性があるのです。
これこそ、まさに私が提唱した分子病理疫学(MPE)と免疫学を融合した免疫分子病理疫学の考え方なのですが、同様の分野横断融合的な研究を進めている人が少なく、AACRのような大きな学会主催の会議を開催して分野の重要性や将来性を知ってもらうことが大切であると考えました。
そこで、AACR主催の会議のプランニングを見据えた前哨戦として、ひとまず今回の教育セッションの開催を考えました。まず私から分子疫学のワークンググループのチェアであるベイラー医科大学のボンディー教授に声をかけてセッションのチェアになってもらい、分子疫学と免疫学の融合的分野の研究をしているメイヨークリニックのグッド教授、RNA解析を用いた免疫バイオインフォマティクスの開発をしているダナファーバー癌研究所の同僚のリウ教授(因みに全員女性です)と私がそれぞれの分野での研究について基本的なプレゼンテーションを行いました。
セッションは冒頭に書いたように盛況で、非常に喜ばしく感じました。聴衆の受けも大変よく、セッションが終わってからも長い間、聴衆の方々と個別に話合いをしていました。
さて、次の目標はAACR主催の会議の開催です。
次回に続く