ハゲタカ(プレデター)にかかわるな!2

振り返れば、1980年代、1990年代に生物学・医学が進歩して、研究者のニーズが世界的に高まり、雨後のたけのこのように大学や教育プログラムが作られました。米国国立衛生研究所のグラントも2000年代前半までは右肩上がりに増えていきました。大学も教員・研究者を大量に雇うことで米国国立衛生研究所や他の機関から研究費を取得できていました。

その成長モデルがストップしたのが2000年代前半です。しかし増えた大学も、教育プログラムも、教員も、研究者もほとんどそのままで縮小することはありませんでした。そして今も大量の研究者を量産しつづけています。その歪みが現在の研究費と研究者の不均衡となって現れています。

大学もビジネスですから、学位を取りたい学生や高学歴志向の世の中のニーズを受けて増殖するのは自然の流れかも知れません。しかし米国でも日本でも、世界中で、数え切れないほどある大学が前途ある有望な若者を研究に従事するべき資質のない人材に育て上げ学位を授与しています。そしてその結果、残念ながら、研究者と研究の質が平均すると低下していると言わざるを得ません。

量産された研究者の大半は研究とは真似をすることと教わり、真似した研究方法で学位を得て、人の真似しかできない研究者となります。研究成果のユニークさや質を追究できない研究者が増え、研究成果の質より量を重視せざるを得なくなります。

その結果、見せかけの研究成果を求める研究者のニーズに合致したビジネスが横行し、真面目に質が高くユニークな研究をしようとする研究者に害を与えています。

表面的な研究成果を追い求めるため、捏造論文も後を絶ちません。

捏造論文でなくても、一般的に論文に掲載された研究結果の再現性が低下していると、何度も何度もネイチャーやサイエンスなどの一流誌で論じられています。これも過度な競争の結果です。

近年のNIHの研究費の採択率を見れば、いかに研究者の競争が激化し、健全な競争を妨げているかわかります。学費ローンを抱えた優秀な学生はより高収入の仕事を得るため研究業界を離れていくことも頷けます。

最早、ただ研究者を増やせば科学技術が発展するとは言えない状況になってしまっているのではないでしょうか。

ボストンでも自腹で何十万円も払ってハゲタカミーティングで講演をした、と得意がっている方もいました。こういう人がいる限り、たとえ研究実績がなくてもうまく功名心をくすぐるこのようなビジネスがますます横行することでしょう。

ハゲタカミーティング、ハゲタカジャーナルの隆盛というのは、この科学界、特に生物学界・医学界のある意味で危機的状況の象徴だと、私は考えます。

今こそ研究者の数より、質を重視すべき時ではないでしょうか。この点について真剣な議論があまり行われていないことが気がかりです。

PixabayのAlexas_Fotosによる画像

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