ボストン交響楽団と音楽1
科学研究の成果であれ芸術作品であれ、後世にいつまでも語り継がれるものこそが本物です。
私は大のクラシック音楽ファンです。初めて興味を持ったのは中学1年の時で、まずはラジオのNHK FMでいろいろ聞いた中で、モーツァルトやベートーヴェンやブラームスなど、メジャーな作曲家の歴史に残っている作品に親しみました。それから特にマーラーの交響曲第1番を初めて聞いたときの衝撃は忘れられません。大学入学以降は様々なCDを買い集め、聞くのにかけては、ほとんど他の人が知らないような作曲家にまで足を広げました。
あまり長続きしませんでしたが大学の時にはチェロを習い始め、医学部の合奏団と東大の全学オーケストラに所属しチェロパートを弾きました。私は完全に足を引っ張る役でしたが、グリーグのホルベルク組曲、エルガーの弦楽セレナーデ、ブラームスの交響曲第2番などに参加しました。ショスタコーヴィチの交響曲第10番という難曲ではさすがに演奏への参加をあきらめました。全学オケを指導していたプロの三石精一指揮者はほんとにすばらしかったです。オーケストラは指揮者が動かすということを実感できました!
アメリカに来てからは、ピッツバーグ(1995-1997)、クリーブランド (1997-1999)、フィラデルフィア (1999-2001)、ボストン(2001-)と武者修行しながら移り歩いた各地にあるオーケストラに通い続けています。クリーブランド管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ボストン交響楽団は、ニューヨーク・フィルとシカゴ交響楽団をあわせて、いわゆる米国オケのビッグ5といわれてきました。このボストンに来るまでの6年余りの私のアメリカでの武者修行についてはまた別の機会に書くことになります。
ボストンに来て今に至るまで18年間はボストン交響楽団(BSO)のサブスクライバーです。BSOは1881年に創設された歴史あるオーケストラで、サブスクライブとは、チケットを定期的に買うメンバーになることです。出張などでいないときを除いて、秋から春のシーズン中は毎週のようにボストンのダウンタウンにあるシンフォニーホールで行われる夜のコンサートに通っています。毎年20回くらい行っているでしょうか。コンサートでは誰もが知っているクラシックの名曲から現代の新作、はたまた通好みの難曲まで、様々な演目を聞くことができ、楽しみにしています。
BSOがあるお陰で尚更ボストンに住めて本当に良かったと思うのですが、唯一残念なのはコンサートが夜の8時開始で終了が10時ころあるいは10時過ぎになってしまうこと。前の記事で書いたとおり、私は早寝早起きのリズムを崩さない生活をキープしたいので、寝るのが11時過ぎになってしまうのがキツイ。コンサートはゆっくり夕食を済ませてから観劇に来る人を対象にしているので、こればかりはどうしようもありません。しかしながら私は、楽団員と市民の良質の睡眠と健康のためということで、BSOに地道に働きかけて、将来なんとかこのスケジュールを変えようと考えています。
今週のプログラム編成はフィンランドシリーズといってもよく、前半は現代フィンランド音楽を代表する作曲家のカイヤ・サーリアホの小品とモーツァルトのピアノ協奏曲第22番、後半はジャン・シベリウスの交響曲第6番と第7番でした。特に7番は通常何楽章もある交響曲を単楽章20分余りに凝縮・濃縮し、無駄な音が一つもないと言われる名曲中の名曲です。今夜の指揮者はジョン・ストルガーズ氏。小澤征爾も昔務めた音楽監督・常設指揮者はアンドリス・ネルソンズですが、世界中からいろんな指揮者が来て客演するのも楽しみの一つです。第7番はあまりに往年の伝説的指揮者であるヘルベルト・フォン・カラヤン指揮の録音に親しみすぎてたせいか、ここぞという見せ場(聞かせ場?)で若干ものたりなさも感じましたが、まずまずのできといっていいでしょう。観客うけもよかったようです。
私は常々、作曲家が後世に財産となる作品を作り出すように、後世にいつまでも役に立つ研究を残すことを目標にしています!
研究室でも早朝の自宅でも、千枚くらい持っているクラシック音楽のCDを聴きながら、集中力を高めて日々研究に邁進しています。
科学でも本物を残したいと思います。